吉永地域の未来を共に考える「公共施設のあり方に関するタウンミーティング」開催レポート
吉永地域において、これからの備前市の公共施設のあり方を市民の皆様と語り合う「タウンミーティング」が開催されました。
少し長くなりますが、吉永の未来、そして私たちの子供や孫の世代へどのような地域を引き継いでいくかに関わる大切な内容です。ぜひ最後までお読みいただき、次回のミーティングへも足をお運びください。
1. なぜ今、公共施設のあり方を議論する必要があるのか?
まず、市から説明された備前市全体の公共施設をめぐる「財政と人口の厳しい現実」を共有します。
① 老朽化する施設と「2152億円」という巨額の更新費用
現在、全国の自治体と同様に、備前市でも多くの公共施設や道路・橋梁などのインフラが老朽化し、一斉に大規模改修や建て替えの時期を迎えています。 平成29年1月に策定された「公共施設等総合管理計画」の試算によると、市内の全公共施設や道路、上下水道などのインフラをすべて今のまま維持・保有し続けた場合、今後40年間で必要となる更新費用(修繕・維持費を除く大規模改修や建て替え費用)は、総額2,152億2,000万円(年間あたり約53億8,000万円)にのぼります。 道路や上下水道を除いた「公共施設(建物)」だけでも、1,173億3,000万円(年間あたり29億3,000万円)という莫大な費用が必要となります。
② 激減する人口と、吉永地域の未来予測
一方で、備前市の人口減少と少子高齢化は極めて深刻なスピードで進んでいます。
- 2005年(平成17年):40,241人
- 2025年(令和7年):28,958人
- 2050年(推計):16,553人
このように、将来働く世代(生産年齢人口)が減り、市の税収が大幅に減っていくことが避けられない状況です。それにもかかわらず、高齢化によって医療費や介護保険給付費は増加し続けます。
③ 備前市の財政は今どうなのか?
「備前市はお金があるから大丈夫ではないか?」と思われるかもしれません。 実際のところ、備前市の財政は、いざという時の貯金である「財政調整基金」が令和6年度決算で66億500万円あり、経常収支比率も89.2%(県内13市平均は91.3%)と、現在の健全性は保たれています。 しかし、ひとたび大災害(平成30年西日本豪雨の被災自治体のように財政調整基金を一気に取り崩すような事態)に見舞われれば、一気に財政危機に転落するリスクをはらんでいます。だからこそ、「まだ財政に余裕がある今のうちに、無理なく管理できる規模へ施設を再編し、健全な財政を維持しておくこと」が求められているのです。
④ 「なぜ、すぐにエアコンを修理できないのか?」市の戸惑い
市民の皆様から「吉永地域公民館などのエアコン(空調)が壊れているのに、なぜ市はすぐに直してくれないのか?」というお叱りをよく受けます。 これに対し、市が二の足を踏んでいる理由は以下の通りです。
- 終わりなき修繕コスト: 多額の費用をかけてエアコンを直しても、今度は照明のLED化、外壁の雨漏り対策など、老朽化に伴って次々と経費がかかり続けます。これを「いつまで原型のまま維持し続けるのか」という見通しが立っていません。
- 優先順位の難しさ: 修繕に使う予算を、例えば市民全員の命や生活に直結する「道路の維持修繕」や「水道管・浄水施設のインフラ整備」に回す方が、市民全体のサービス向上になるのではないか、という投資の優先順位に戸惑いがあるためです。
そのため、単に施設を今のまま延命するのではなく、「縮小化するのか」「複合化して残すのか」といった根本的な方針を市民の皆様と決めたいというのが、今回のミーティングの目的です。
2. 吉永住民のタウンミーティングで上がった「生の声」
このミーティングでは、吉永を愛し、地域で生きる住民の皆様から、非常に熱く、そして具体的で建設的な意見や要望が次々と上がりました。その声をありのままにお伝えします。
① ホームランドを守りたい!
吉永地域公民館をホームとして利用される方々から、公民館ホールへの熱い想いが語られました。
私たちのホームランド。年に1回の公演では、350席あるこのホールを2回公演で埋め、2日間で500人ものお客様が集まってくださいます。 もし『備前市民センターでやったらどうか』と言われても、吉永の高齢のお客様はそこまで足を運ぶことができません。 私たちを育ててくれた地域の人に、この吉永で喜んでもらう活動を続けたいのです。 私たちにできることは、この公民館の利用者を増やして、優先順位の議論の中で『吉永公民館は絶対に必要だ』と思ってもらえるように活動を盛り上げることだと思っています。
② 最優先で改善を!吉永駅の「トイレ男女共用問題」
また市民の方からは、生活に密着したインフラ改善の要望が上がりました。
「駅の吉永のトイレが、未だに男女共用のままになっています。隣の駅の市民トイレはとても綺麗に男女別になっているのに、女性にとって非常に入りにくく、ずっと問題になっています。公共施設を語るなら、こうした生活に身近な部分の改善を真っ先に行ってほしいです。 行政と市民が一緒になってアイデアを出し合い、観光施設などで人を集めてお金が回るような、新しい風を起こす動きを作っていきたい」
③ 地域活動グループの切実な要望と提案
7名で参加してくださった地域グループの皆様からは、公民館の使い勝手や跡地活用についての具体的な声が上がりました。
- 朝の利用時間延長の要望: 「自分たちで『猫飯(ねこめし)』を作って販売しているが、公民館の利用が朝9時から夕方5時までのため、準備が間に合わない。もう少し朝早くから使わせてもらえないか」
- 伝統の味噌部屋を守って: 「様々なグループで協力してお味噌作りをしている。手作りの温かみのある味噌の良さを皆に知ってもらいたい。今ある味噌部屋を壊さないでほしい」
- 利用料金の減免提案: 「地域の集まりで公民館を使いたいが、有料なので集まりにくい。管理費程度(無料や減免)で使わせてもらえるようにならないか」
- 休止施設の有効活用: 「幼稚園の跡地などが有効活用されていない。自分たちのように地域を盛り上げたいグループに使わせてほしい」
- 自由な場所の確保: 「世代を超えて誰でも自由に使える、集まれるコミュニケーションの場(空き地を農園にするような活用法も含め)が本当に必要です」
④ 子どもの学び舎を人質にしない!小中学校と「削減目標」の議論
小学校に通うお子さんを持つお母さんから、「学校は公共施設に含まれるのか、予算はどうなっているのか」という質問が出されました。 これに対し、学校も当然公共施設ですが、今回の個別管理計画(建物のみ)からは除外されており、別枠で考えているという回答がありました。 この点について、別の市民の方からは極めて鋭い指摘がありました。
「国から示されている『一律40%削減』という目標があるが、これを杓子定規に当てはめると、床面積の大きい学校を1つ廃校にすれば、一気に目標が達成できて国からの補助金が維持される、という本末転倒な議論になりかねない。『補助金がもらえるから学校を先につぶす』といった歪んだ議論が進まないよう、 教育施設や公民館など、分野・ジャンル別に削減目標を設定すべきではないか」
⑤ 施設が遠くなるなら「移動の足(交通手段)」を絶対にセットに
「設備の効率化や人口減少に伴う施設の統廃合は、仕方のない面もあるかもしれない。しかし、施設が統合されて遠くなってしまったら、そこへ通える移動手段を必ず用意してほしい。例えば週に数回でもいい、午前と午後にしっかりと往復できて自宅へ帰れるようなバスなどの足を絶対に確保してほしい」 ※これに対し、市側からも「吉永での自動運転バスの試験運行などの経験を活かし、地域の足をどう守るかという交通政策も含めて一体的に明るい未来を考えていく」との前向きな方針が示されました。
3. これからの進め方:対立ではなく「同じ方向を向く」対話へ
タウンミーティングの中では、これまでの市の進め方(「なぜ急にこんな話が出てきたのか」「進め方が唐突でモヤモヤする」といった不満)に対する厳しいご指摘もたくさんありました。
しかし、今回参加された市民の皆様、そしてコーディネーターの大学教授、市役所の職員たちに共通していたのは、「役所をやっつける対立構造ではなく、お互いに同じ方向を向いて建設的なアドバイスをし合おう」という姿勢でした。
単なる「お上が決めた数字(床面積削減ありき)」の押し付けでは、地域の本当の幸せ(ウェルビーイング)は作れません。 例えば他自治体の先進事例として、
- 施設の複合化(多目的な機能を1つの建物に集約する)
- 地域への譲渡(使いたい住民に施設を譲渡し、住民自身で自主管理する)
- 自治体の枠を超えた広域連携(隣接地域とお互いの強みを活かして施設を使い回す)
といった、賢く前向きな選択肢も示されています。これらを、吉永の皆様の暮らしに寄り添って、一緒に選んでいく必要があります。
4. 今後について
このミーティングは、市の方向性を決める前の「第0回」としての位置づけであり、市は市民の皆様の率直な思いやアイディアを聞かせていただく段階としています。
今後の吉永地域の公共施設をどうしていくのか、限られた予算の中でどのような優先順位をつけていくのかは、まだ決まっていません。だからこそ、今、皆様の「声」が必要です。
今回のタウンミーティングは、キックオフに過ぎません。ここからがスタートです。 皆様の「こういう場所があったらワクワクする」「こうすればもっと吉永が良くなる」という前向きなアイデアを、ぜひこれからの対話にぶつけてください。どんなご意見でも構いません。皆様の納得のいく合意形成を図るため、ぜひこれからもタウンミーティングに足をお運びいただき、ご意見をお聞かせください。